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タックル法律講話

第20話 取り調べの可視化

「取調べの可視化」で冤罪が減るのはいいが・…
反対に、自白が取れない捜査で犯罪者が大手を振って闊歩することに?

可視化とは?

 小沢一郎民主党幹事長が不起訴になりましたね。検察は、証拠が不十分と判断して、政治資金規正法違反での起訴を見送りました。起訴された民主党の石川議員の事件も含め、民主党側からは、「検察の国策捜査だ!」「取調べのやり方がヒドイ!」などの声があがりました。それをきっかけに、民主党や人権派と称する人たち(弁護士会も?)から、「密室での取調べが、冤罪を生む元凶だ!取調べを可視化せよ!」という声が再び大きくなっています。
 取調べの可視化とは、取調べの最初から最後まで (取調べの全過程)をビデオ録画(可視化)しておくというものです。そうすれば、被告人と捜査官の言い分が違っても、録画したものを再生すれば容易に適正な判定を下すことができる、というのです。
 確かに、可視化によって、捜査官が自白を強要することは難しくなりますから、冤罪を防ぐ一定の効果はあると思います。最近、記憶に新しい「足利事件」などでも、無実の人が間違った取調べと裁判で有罪にされてしまうという恐ろしい過ちが起きています。ですから、「冤罪を出してはならない」というのは当たり前であるし、絶対にそうあるべきだと思います。
 しかし、一方で、捜査というものは、「真実の発見・犯罪者の検挙」というテーマと「一人の冤罪も出してはならない」という相反するテーマを内包しており、この点に難しさがあります。つまり、「冤罪を出してはならない」ということだけを強調しすぎると、反対に、「真実の発見・犯罪者の検挙」が難しくなります。ただでさえ、近年は、犯罪が複雑化・巧妙化し、捜査機関による犯罪の摘発が難しくなり、また、捜査能力の低下が指摘されています。ですから、ただ単に、取調べの可視化をすればいい、という単純な問題ではないのです。

問題はバランス

 これに対して、可視化に賛成する人たちは、「欧米などの諸外国では、既に可視化を行っている。日本は遅れている!」と批判します。しかし、諸外国では、日本にはない捜査手法が認められています。司法取引やおとり捜査、通信傍受など、捜査機関が犯罪者を逮捕・検挙できるように様々な武器が与えられているのです。ですから、取調べの可視化だけを導入するというのはおかしな話なのです。
取調べの可視化を実現した結果、誰も本当のことを言わなくなり、犯罪者を逮捕・検挙できない、ということがあってはなりません。
 「真実の発見・犯罪者の検挙」と「一人の冤罪も出してはならない」という二つのテーマの間で、どうバランスを取るのか?という視点を忘れてはならないのです。皆さんはどう思われますか?
 それでは、また次号で!

ビジネス情報誌「フォーNET」掲載:2010年3月号

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