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タックル法律講話

第12話 「特捜部」とは何か?

大阪地検特捜部の「フロッピーディスク改ざん」事件!
「特捜部」って,一体,何なのでしょうか?

実は「特捜部」はたいしたことはない

 先日,大阪地検特捜部の前田恒彦検事が,村木厚子・元厚生労働省局長の無罪事件の際に押収したフロッピーディスクを改ざんしたとして証拠隠滅容疑で最高検察庁から逮捕・起訴されましたね。また,前田検事をかばったとして,犯人隠避容疑で上司だった大坪弘道特捜部長と佐賀元明副部長も逮捕されました。しかし,大坪部長と佐賀副部長は,「前田からは,過ってフロッピーディスクを書き換えてしまった,としか報告を受けていない」として全面的に否認し,前田検事の供述と真っ向から対立しています。検察の身内,上司と部下の泥仕合に発展しています。
 そもそも,「特捜部」とは何なのでしょうか?「特捜部」と言うと,何か凄い力を持っているようなイメージがありますが,実際はたいしたことはないのです。「特捜部」というのは検察の一部署に過ぎず,法律上の特別な捜査権限があるわけでもなく,警察や検察といった捜査機関と何ら変わるところはありません。ただ,「特捜部」には,いわゆる優秀と言われる検事が集められるので,「何だか凄い!最強の捜査機関だ!」というイメージが出来上がってしまったのでしょう。
 しかし,いかに優秀であろうとも,「証拠」がなければ,被告人を有罪に持ち込むことはできません。「証拠」が弱いのに,有罪に持ち込もうとすれば,結局,「自白」を取らざるを得ない。そこで,密室での強引な取調べによって「自白」を取る,ということに血道を上げてしまうのです。
 前田検事は大坪部長のお気に入りで,特捜部の「エース」と呼ばれていたそうですが,本当に「エース」と呼ぶほどの能力があったのでしょうか?前田検事は,怒鳴ったり,脅したり,すかしたりの強引な取調べで被疑者から「自白」を取ることが多く,「割り屋」として重宝がられていたようですが,たまたま今までは手掛けた事件が有罪に持ち込めただけであって,今回のように,他の「証拠」が弱ければあっさりと無罪になってしまう程度のものだったのであり,「エース」というにはお粗末過ぎます。前田検事は,改ざんの動機について「上司(大坪部長)に認められたかった」と供述しているそうです。

「東京」対「大阪」の闘い?

 また,今回の事件からは,検察内部の「東京」対「大阪」という対決の構図が見てとれます。「東京」からすれば,「特捜」と言えば「東京地検特捜部」のことであって,「大阪は特捜部ではない!一緒にしないでくれ!」というのが本音です。そこには,強烈なエリート意識があります。これに対して「大阪」は,「東京に負けたくない!でっかい政治家案件をやらなければ!」という対抗意識を剥き出しにしています。今回の村木さんの無罪事件も,「大阪」が功をあせって強引な捜査で裁判に持ち込んだ,との見方がもっぱらです。
 「東京」の最高検察庁が,前田,大坪,佐賀らを異例のスピード逮捕したのも,「大阪」側に任せていたのでは問題が広がり検察全体が大ダメージを受けてしまう,という「東京」側の危惧があったのでしょう。仮に,前田,大坪,佐賀らが「東京地検特捜部」の検事であれば,果たして逮捕まで至っていたのかどうか…?
 結局,今回の事件で,検察といえども所詮は人間であり,組織の理論,サラリーマン的な人事,派閥,出世争いから逃れることはできず,腐敗,暴走に歯止めをかけることが難しい,ということが浮き彫りになりました。
 それによって,違法・不当な捜査を受ける国民はたまったものではありませんが,他方で,特捜部が頑張ってくれないと悪徳政治家が逮捕されず,のさばることになります。どちらも国民にとっては不幸なことです…。それでは次号で!

掲載日:2010年11月1日

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