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第1話 裁判官の言葉~心に響いていますか?
「二度と同じ過ちを犯さぬように」
法廷には「感銘力」が必要です。
裁判長の「訓戒」は被告人の心に響いてますか?
「下手な芝居はやめなさい!」
先日、目が見えないとウソを言って長年にわたり生活保護の障害加算金を騙し取り、
詐欺罪に問われた男性の判決公判が札幌地裁で開かれ、嶋原文雄裁判長は「福祉を食い物にした卑劣、
悪質な行為」として、求刑通り懲役4年を言い渡しました。
嶋原裁判長は、「視力障害は本物だ」との被告人の主張を退け、その上で「反省の情は皆無」と指摘、
被告人に「分かりましたか。下手な芝居はやめなさい。」と話しかけたそうです。
刑事裁判では、「裁判長は、判決の宣告をした後、被告人に対し、その将来について適当な訓戒をすることができる」
(刑事訴訟規則第221条)ことになっています。今回の嶋原裁判長の「下手な芝居はやめなさい!」というのが
「将来について適当な訓戒」と言えるかは微妙(?)ですが、通常は、裁判長が、被告人に対し、
「反省して頑張りなさい」、「しっかり立ち直りなさいよ」という言葉をかけたりします。
この「訓戒」は「することができる」と規定されていますので、裁判長が必ずしなければならない訳ではありませんから、
「被告人が将来どうなろうとも構わない、どうでもいい」と考えるようなやる気のない裁判官は、
この「訓戒」をせずに何の言葉もかけない場合もあります。
刑事裁判といっても、ほとんどは、交通事故、覚せい剤、
窃盗といったありきたり(?)の同じような事件を裁いているわけですから、
裁判官も飽きるのでしょうか、被告人に「訓戒」をしない裁判官もいます。
しかし、私が十数年前に司法修習生だった頃の指導担当の裁判官(今は、福岡地方裁判所のお偉い方)は立派な方で、
「訓戒が規定されているということは、
やはり被告人の将来の更正に少しでも役立つように言葉をかけた方がよいということだ。
法廷には、被告人の心に働きかけるような,『感銘力』がなくてはならない。」というのが持論で、
どんなささいな事件でも必ず「訓戒」をしていました。
心に響く「訓戒」とは?
ただし、「訓戒」も、一つひとつの事件をしっかりと理解しないと、
ただ上っ面の言葉だけでは被告人の心には響きません。
「反省しなさい、二度と罪を犯さないように」というような決まり文句では困ります。
やはり、「訓戒」の上手な裁判官は、事件の記録をよく読み込み、内容を理解しています。
同じ覚せい剤使用の事件にしても、被告人一人ひとりの事情は違います。
なぜ覚せい剤を使用するようになったのか、生活環境はどうか、
親、配偶者、子供たちとの関係はどうか、仕事はどうか、など動機や生い立ちが事件記録に書いてあるのですが、
その記録をしっかり読み込んでいる裁判官は、被告人一人ひとりの事情を理解した上で「訓戒」をしていますので、
言葉も具体的ですし、被告人の心に響きます。中には、それを聞いて泣き出す被告人もいました。
一つひとつの事件、被告人の個別性を見て、事件記録をきちんと読み、
被告人に感銘力を与えるような「訓戒」をしなくてはならない、
という裁判官としての職業倫理を持ってやっている人は立派だと思います。
残念ながら、そうでない裁判官もいます。
来年から「裁判員制度」が始まりますので、一般の方々も裁判に参加します。
是非、感銘力のある法廷にしてもらいたいものです。それでは,また次回!
タックル法律講話とは…
当事務所代表の堀内恭彦がビジネス情報誌「フォーNET」に連載中の人気コラムです。
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